占いの誕生には四大文明の一つの古代エジプトの死生観が関係していると言われています。
占いの歴史と関係する古代エジプト人にどんな死生観があったのかをご紹介します。
不毛の大地エジプトに恵みを与えたナイル川
エジプトは古代から雨がほとんど降らない不毛砂漠地帯でした。
そんな砂漠の中央に常に豊かな水をたたえて流れているナイル川は古代エジプト王朝に恵みを与えていました。
ナイル川は日常生活に使われるだけでなく、人が物が行き交う航路としても使われ、約4000年もの長い間、古代エジプト王朝に栄華を築かせることができたのです。
「エジプトはナイルの賜物」という古代ギリシャの歴史家ヘロドトスが有名な言葉を残しましたが、まさにその通りだと言えるでしょう。
ナイル川は古代エジプト人にとってとても神聖なものとして、エジプトの有名な紋章や象徴の形となってピラミッドや神殿の彫刻に残されています。

ナイル川を衛星写真で見るとわかると思いますが、源流からずっと1本の川筋が伸びていますが、ピラミッド群のあるカイロのあたりから急に支流を増やして地中海にあたるころには緑の広がるデルタ(三角州)を作っており、この形がエジプトを象徴する「ロータス(睡蓮)」を思わせます。
また、「アンク」という輪付きの十字架は生命の鍵と言われていますが、これもナイル川を模した形と言われています。

そして、ナイル川は古代エジプト人に独特な死生観をもたらしました。
古代エジプト人は現世よりも来世を重要視したのです。
来世とは死後の世界のことであり、ナイル川の東側は生者が西側は死者が住む町とされ、西側に墓がたくさん作られました。
ナイル川氾濫を予知する星「シリウス」
古代エジプトの新年の幕開けは現在の暦でいうと7月19日頃になります。
なぜならその頃にナイル川が氾濫を起こし作物を育てるために必要不可欠な肥沃な土が古代エジプト王朝に運び込まれるからです。
この氾濫は毎年必ず起こりました。
普段は川幅が1kmほどのナイル川が夏になると40kmにもなる大洪水。
古代のエジプト人はなぜこのような大洪水が起こるのかが分からなかったため、とても神秘的な現象でした。
そして神殿は今年も滞りなく氾濫が起きたことを祝い、豊作を願いました。
また、この現象が起こる頃に東の地平線上に太陽を連れてとても明るい星が現れたことに気づいたのです。
この星が「シリウス」です。
シリウスは冬の星座の星でとても明るい恒星で、日本でも夏になると太陽が出る少し前に地平線すれすれの位置で見ることができます。
古代エジプト人はこの星を神聖な星として崇め、この日を年の境として太陽の動きを基本とした1年を365日とする独特の暦が誕生し、これが太陽暦として現代に続いているのです。
この太陽の動きを基本とするのは時間も同じで現在と同じ24の単位で構成されました。
古代エジプトでも太陽は神として崇められ、昇っては沈みを毎日繰り返す動きは死後に再生と復活をするという死生観に大きな影響を及ぼしました。
憧れの永遠の命
古代エジプト人は来世をとても重要視していました。
それは今生きている「この世」よりもです。
この世は生を受ければいつかは命が尽きて死が訪れます。
ですが、死後の世界である来世では「永遠の命」が授かると考えていたのです。
どのくらい意識に違いがあったのかというと「この世」の生活か欠かせない住居は日干しレンガで造り、非常に簡素な造りとしていました。
それは一般市民だけではなく、王であるファラオの住居でさえもです。
ですが、死後の世界である「あの世」の住処、お墓や神殿は石材などの朽ちることのない建材で造られ、長い歴史を超えても現存できています。
では、死後の世界である「あの世」とはどんな世界だったと考えられていたのか。
それは「イアルの野」と呼ばれるところで、緑がとても豊かで常に生い茂っており、木々には実がたくさん実り、農作物は常に豊作、水も尽きない安住の地。
エジプトの神々が祝福を与え、戦争のない平和に暮らせる楽園だと考えられていました。
とはいえ、エジプトもナイルの賜物をいただき、農作物や水にも恵まれたオアシスが「この世」にもあり、あまり生前と変わらないように見えます。
ただ、唯一違うのが「永遠の命」であり、「死への恐怖がない」ということ。
「死後の世界で永遠の命を得る」という再生復活を果たすことが古代エジプト人にとってこの上ない願いだったと言えるでしょう。
生前の行いとアムムトの冥界審判
古代エジプト人の考える死後の世界「イアルの野」には誰でも行けるというわけではありませんでした。
イアルの野に行く前に非常に厳しい、神による冥界裁判が行われ、それによって入国審査のようなものが行われます。

日本でいうところの死んだら閻魔大王の裁判にかけられ、極楽か地獄のどちらかに行くという考えと同じようなものでしょうか。
古代エジプトの遺体と言ったら「ミイラ」ですが、ミイラは死後に永遠の命を得るために遺体を保存するための行いです。
ミイラは遺体が腐らないように内臓を別の壺(カノプスの壺)に入れて保存しますが、心臓だけは遺体に残されます。
それは心臓は永遠の命を得るための重要な身分証明書となったからです。
心臓は人の感情を司っていると考えられていて、冥界審判のときに心臓を真理の象徴「マアトの羽」と天秤にかけられて生前の行いを判別されていました。
生前に盗みや嘘をつくなどの悪行を一つでもしていれば、その場でアムムトと呼ばれる冥界の怪物に心臓を食べられてしまいます。
そうなるとイアルの野へ行くこともできなければ、来世に復活する事すらできなくなるのです。
古代エジプトではそんな理由があり、犯罪はとても少なく、治安がよかったと言われています。
このように古代エジプトでは独自の死生観によって治安も優れていたのです。
いずれ記事にするつもりですが、この独特の死生観とエジプトという環境は、「占い」においても独特の考え方を持たせたのです。