
占いといえば代表的なのが西洋占星術。
その西洋占星術の発祥の地は古代メソポタミアだと言われています。
古代メソポタミアでは他にも様々な占いが記録されています。
そんなメソポタミア地方の人々がどんな信仰をしていたのかご紹介したいと思います。
神殿ジッグラトとバベルの塔
西洋占星術の発祥の地と言われる古代メソポタミアはこんな地域です
古代メソポタミア地方はチグリス川とユーフラテス川の間の流域や周辺を含む地域を指します。
現在ではイラクにあたる地域であり、土壌が豊かで大規模な灌漑農業がおこなわれ穀物の収穫に大変恵まれた地域でした。
紀元前3000年頃に巨大な都市国家が発展し栄華を誇った地です。
古代メソポタミアの最初の文明はシュメール人という民族による文明です。
シュメール人は紀元前2000年頃にセム系民族の勢力によって姿を消してしまいます。
ですが、言語もシュメール語からアッカド語に代わっても文化は継承され続けます。
ライオンズゲートなどの伝承もいまだスピリチュアル界では現代に続いていますね。
紀元前539年にペルシア帝国に征服されるまでいくつもの民族や王朝が古代メソポタミアを支配しましたが、シュメール人の文化・信仰は継承され続けたと言われています。
古代メソポタミアの都市部には守護神を祀る神殿と塔が建ちました。
神殿は壮麗で、聖なる塔は天に向かってそびえ立っていました。
塔の名前はジッグラト。
ジッグラトは天と地を結ぶ懸け橋と考えられていて、天の神は塔の頂上にある聖域に降り立って階段を通って神殿に入ると言われていました。
都市バビロンにあったジッグラトは90mもの高さを誇り、この塔こそが聖書にあるバベルの塔であると考えられています。
信仰されたあまたの神々
古代メソポタミアの人々の信仰はキリスト教のような一神教ではなく、日本やギリシャなどのような多神教でした。
日本でも「八百万の神々」と言われていますが、古代メソポタミアのシュメールの時代には1,000を超える神々の名前があったそうです。
太陽や星々、大気や台地などの自然のものや自然現象と日本の八百万の神々と同じように信仰していたようです。

その中でも上位の神々として名高いのが「大気・権力の神 エンリル」「天空・権威の神 アン」「水・知識の神 エンキ」などが上げられます。
ほかにも「月の神 ナンナ」「太陽神 ウトゥ」「金星の神 イナンナ」「大地母神 ニンフルサグ」などが崇拝されていました。
古代メソポタミアの信仰では最高神は「大気、権力の神 エンリル」と言われていて、個人的な意見ですが天照大御神のように太陽神が最高位と固定観念のある私からは意外な順位だなと感じてしまいました。
さて、これらの神々は自然神であるとともに、特定の都市の守護神でもありました。
というのも、シュメール人の神話には人は神々のために働く存在であるとあり、シュメール人にとって真の王はその都市の守護神であると考えていたからと言われています。
さらに守護神の下位の神々は人を一人一人守護していると考えられていて、個人神として崇拝し日常的に個人神に様々な願い事をして過ごしていました。
シュメール人は神々のしもべとして労働の義務を果たしながら、占いによってできるだけ災難を避けるように神に願い、そしてビールを飲み、スパイスの効いた食事で日々の暮らしを楽しんで人生を送ったようです。
叙事詩に残された創世神話と人間の誕生
古代メソポタミアの叙事詩に残る創世神話は当時の人々が世界をどうとらえていたのかがわかります。
神話には人間や宇宙の起源がつづられています。
天地の始まり
古代メソポタミアのバビロニア人は新年を祝うお祭りで神殿で叙事詩「エヌマ・エリシュ」を詠いました。
その叙事詩には世界、宇宙の始まりについて描かれていました。
昔、天も地も分かれず、混沌のみ。 初めは真水のアプスーと塩水の女神ティアマト。 そしてムンムという生命力だけが存在した。 やがてアプスーとティアマトは混じりあい、次々と神々が生まれる。 その神々の間で争いが起こり始めた。 戦いの末に知恵の神エア(エンキ)の息子、マルドゥク神は女神ティアマトとの一騎打ちとなる。 勝利をおさまめたマルドゥク神はティアマトを真っ二つに割いて、片方を天、もう片方を大地としました。 それ以来天と地は分かれるようになった。
さらに、マルドゥク神は天に神々に似せた星を作ります。
太陽、月、ほかの恒星などを作って12星座を配置し、一年を定めたと描かれているそうです。

人間の誕生と寿命が短いわけ
紀元前1700年頃の古代バビロニア時代には「アトラ・シハース物語」という神話で人間の起源について語られています。
昔、人間がこの世に存在していなかったころ、神々は自ら労働をしていました。 神々にも上下関係があり上位の神はなにもせず、下位の神が休みもせずに働き続けました。 過酷な労働の日々に下位の神々は反乱を起こします。 ストライキを起こすと知恵のある神エア(エンキ)はその事態を憂い、神の代理を作ることにしました。 粘土に神の血を混ぜ、人間を作ったのです。 神の血により労働を担う能力があるものの、粘土でできているのでやがて体は土へと還るのです。
古代バビロニアではこのように人間が誕生したと伝えられてきました。
神の代理として作られた人間は次第に地上にあふれかえってくるようになると、どんどんと地上が騒がしくなっていきます。
その騒がしさで最高神である大神エンリルが眠れなくなり癇癪を起すように。
エンリルは疫病や日照りなどとあの手この手で人間に災厄を起こします。
その度に知恵の神エアが人間を助け、難を逃れつづけました。
するとエンリルは怒りのあまり洪水を起こして人間を滅ぼそうと計画を立てます。
エアはなんとか人間を助けようと、賢者アトラ・シハースの枕元に立ち、神の計画を伝えました。
アトラ・シハースはエアの助言に従い、方舟にのって大洪水の難から生き延びました。
エンリルはさらに怒り狂いますが、エアは怒りをおさめるために人間の寿命を縮め、女性を一部不妊にさせたのです。
人間は以降100歳以上を生きられなくなり、若くして命を落とすものもあらわれるようになったのです。
不快に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、神話に基づき、あえて一部の不妊を女性と表記させていただきました
古代メソポタミア人が崇拝した神々
古代メソポタミア人は多神教であり、自然や天体、あらゆる現象が神々と深く関わっている信じていました。
シュメール人たちは千を超える神々を考え、神話として語り継ぎました。
神話はその後の政治的理由から神々の数が減ったり、神々の性格や関係性に矛盾が生じていくものの代表的な神々はその後も信仰深く語り継がれていきます。
もっとも古いシュメール人の神話には原初の混沌から天と地が分かれ、天をアン神が、地をエンリル神が治めるようになり、そこから世界が始まったとされています。
地の下には生命の源である深淵がありエンキ神が治め、アン、エンリル、エンキが特別な三柱として、神話の世界が広がっていきました。
古代メソポタミア人は下位の神々は自分を守護する個人神として自分の中にいるとも考えていました。
もしも不運が訪れた場合は個人神が離れてしまったと考えたようで、個人神を正しく祀る方法やそれによって難を逃れた逸話なども残っています。
古代メソポタミアの王は神の代理人として考えられていました。
有名な「ハンムラビ法典」を制定したハンムラビ王も「法と正義の神シャマシュ」が命じる像が残されています。
少し逸脱しますが、ハンムラビ法典は「目には目を、歯には歯を」という言葉が有名ですが、これは「復讐してよい」という意味ではなく「復讐するな!どうしても悔しいなら同等で止めなさい」という意味であり、この法典のあとがきには王の言葉として「強者が弱者を虐げないよう、孤児や寡婦が生活に困窮しないように…」という願いも書かれており、ハンムラビ王は賢王として称えられていました。
古代メソポタミアの代表的な神々 エンリル・アン・エンキ
古代メソポタミアの代表的な神々の三柱
日本ではあまりなじみがないのですが、占いの起源でもある神々でもあるので、少し紹介したいと思います。
大気の神 エンリル
エンリル(アッカド語でもエンリル)とは「風の主」を意味しています。
地上で吹く風はの主であり、地上世界の主であり、最高神として君臨していました。
「諸国の王」や「神々の王」とも言われています。
天空の神アンの息子であり、権力の象徴でもあります。
天空の神 アン
アン(アッカド語ではアヌ)は「天」を意味しています。
もともとは最高神でしたが、エンリルに権力を渡した後は特別な地位を与えられましたが、直接信仰される対象ではなかったようです。
「宇宙の王」として称えられました。
大地と深淵の神 エンキ
エンキ(アッカド語ではエア)は「地の主」を意味しています。
人間を神々の働き手として創造し、人類を洪水から救った「知恵の神」でもあります。
「運命を定める王」としても称えられています。
星を司る神々
重要な三柱のほかに、古代メソポタミアでは星も神々が司っていると考えていました。
この星を司る神々は占星術の起源的存在。
星を司る神々についても少し紹介していきたいと思います。

太陽神、裁判の神 ウトゥ
ウトゥ(アッカド語ではシャマシュ)は「日」「太陽」を意味していて、「真実と正義の主」とたたえられています。
ハンムラビ王に使命を与えた神でもあります。
地上を照らし、すべてを見通すということから「占いの神」でもあり、闇に息づく悪鬼を払うともいわれています。
月の神 ナンナ
ナンナ(アッカド語ではシン)は「満月」を表しています。
別名でスエンとも言われていて「三日月」を表しています。
古代メソポタミアは太陰暦を使っていたので暦を司る神であり、農耕の神としても称えられています。
大地母神 ニンフルサグ
ニンフルサグ(アッカド語も同)はエンキの妻であり、大地母神「山の女主」という意味を持っています。
豊穣の神であり子孫繁栄の神でもあり、「神々の母」として称えられています。
出産の女神ニントゥや大いなる女王ニンマフなどとも呼ばれることもあります。
愛と戦いの女神 金星神イナンナ
イナンナ(アッカド語ではイシュタル)は「天の女主」を意味しています。
愛の女神でもあり、戦いの女神でもあります。
金星を司り愛の女神ということもあり、ギリシャ神話のアフロディテやローマ神話のヴィーナスと同一視されています。
「イナンナの冥界下り」は有名な神話で動植物の枯死の起源と語られています。
また「ギルガメッシュ叙事詩」など数多くの神話に登場していることから広く崇拝されてきたことをうかがわせます。
火星神 ネルガル
火星の神ネルガルは破壊をもたらす戦争の神であり、疫病や熱病などの病気をもたらす災厄の神として恐れられてきました。
西洋占星術でも火星は凶星とされており、攻撃性や怒り、熱、火や鉄製の武器、戦争による死傷者などを表しており起源を感じさせます。
そんなネルガルですが、有名なのは妻のエレシュキガルの方。
エレシュキガルはイナンナの姉であり、冥界の女主。
イナンナととても仲が悪く、イナンナが思いつきで冥界に下ってきたときに激怒し死に至らしめます(イナンナの冥界下り)。
木星神 マルドゥク
木星の神マルドゥクは元々はバビロンという一都市の守護神でしたが、バビロン第一王朝が地方を統一することによって政治的に最高神となり崇められるようになりました。
マルドゥクが最高神となるバビロニア神話ではマルドゥクの武器は嵐と雷とされており、ギリシャ神話の最高神であり木星の神ゼウスを彷彿とさせられます。