西洋占術の理解に不可欠なのが、多様な対象を四つの基本的なエレメント(四大元素)に分類することです。
これらのエレメントは、占星術の読み解きにおいてイメージの豊かな源泉となります。
それぞれのエレメントは独自の特性を持ち、人々や世界の多面的な性質を理解するための鍵となります。
この世界は四大元素で構成されている
四大元素、または「4エレメント」として知られるのは、火、地(土)、風(空気)、水の4つを指します。
古代ギリシャの哲学者エンペドクレスによる分類では、これらは宇宙の基本的な構成要素とされ、地は土に、風は空気とそれぞれ対応しているとされています。
これらの元素は、自然界だけでなく、人間の性質や世界の理解においても深い意味を持っています。
火は変化と情熱を、地(土)は実体と安定を、風(空気)は思考とコミュニケーションを、水は感情と直感をそれぞれ象徴しています。
これら四大元素の概念は、西洋占術だけでなく、多くの哲学的、精神的伝統においても核となる考え方として受け継がれてきました。
それぞれのエレメントをもう少し詳しくご紹介します。
火

火は、その発光能力と熱により、強烈に燃え上がる性質を持つ元素です。
この元素は、物質を融解や溶接することで、破壊と創造の双方の力を併せ持っています。
太陽の温かさを思わせるように、火は生命のエネルギーと活力を象徴し、その力強さからしばしば男性的な特性と結びつけられます。
また、その光り輝く特性により、火は神聖なものとして崇められ、浄化や悪を払い清める力を有するとされてきました。
しかし、火には稲妻、マグマ、戦火など、破壊的な側面もあり、その猛威は恐れられてきました。
このように、火はその多面的な性質により、文化や伝統の中で多くの象徴的な意味を持つ存在として位置づけられています。
西洋占星術の12星座では、牡羊座・獅子座・射手座。
タロットの大アルカナ「世界」にも描かれている四聖獣では獅子、スートでは「ワンド」、コートカードでは「キング」が象徴となります。
大天使ミカエル、精霊であればサラマンダーの象徴でもあります。
地(土)
地(土)は、私たちの生活において不可欠な安定した基盤です。
これは肉体を養い、住まいを支え、私たちに食物を供給する土壌そのものです。
古代の神話では、大地はしばしば母神として崇拝されました。
例えば、ギリシャ神話におけるガイアやローマ神話のテルスは、大地の神として豊穣と生命の源泉を象徴しているとされ、豊かな実りをもたらす豊穣の角を持った姿で表現されることが多いです。
また、古代の文化では、神々が土や泥を用いて人間の肉体を創造したという物語が広く伝わっています。
例として、アダムはラテン語で「リムス」、つまり泥を意味し、人間の創造と大地との深い関連を象徴しています。
このように、地は生命の源であり、古代から現代に至るまで、人々の生活と密接に関わり、多くの文化や宗教において神聖視されてきました。

西洋占星術の12星座では、牡牛座・乙女座・山羊座。
タロットの大アルカナ「世界」にも描かれている四聖獣では牛、スートでは「ペンタクル」、コートカードでは「ペイジ」が象徴となります。
大天使ウリエル、精霊であればノームの象徴でもあります。
風(空気)

風(空気)は、天から地上のあらゆる隅に至るまで吹き渡り、物を移動させたり、声を運んだりする不可視の力です。
この見えない性質にもかかわらず、その効果を通じて私たちは風の存在を実感し、動きを感じ取ることができます。
その目に見えない特性から、風はしばしば神秘的な力、あるいは神々の意志の表れとして捉えられてきました。
例えば、聖書において「神の息吹」は、生命の吹き込みや神の意志の伝達といった超自然的な現象を象徴する言葉として頻繁に用いられます。
また、風は、特定の方向から吹くことから、しばしば擬人化されて羽のある存在として描かれることがあります。
これらの表現は、風が単なる気象現象を超えた、文化や宗教における深い象徴的意味を持つことを示しています。
西洋占星術の12星座では、双子座・天秤座・水瓶座。
タロットの大アルカナ「世界」にも描かれている四聖獣では天使(人間)、スートでは「ソード」、コートカードでは「ナイト」が象徴となります。
大天使ラファエル、精霊であればシルフの象徴でもあります。
水
水は、引力や外部からの力によってその形を大きく変える、流動性を持った自然界の要素です。
水は波を立て、流れを作り、周囲の物質に浸透し、生物の渇きを癒します。
その流動的な性質から、無意識の世界や根源的な生命力を象徴すると考えられがちです。
例えば、月の引力による潮の満ち引きは、外界の力に応じて水がその姿を変える神秘的な現象として古くから認識されてきました。
このように、水は周囲の環境や力に敏感に反応し、形を変えるその性質が、古代ギリシャやローマでは、露が月の光によって生み出されるという美しい伝承につながりました。
また、水はあらゆる生命の源泉として、育成と成長の象徴、特に母性や女性的な要素と密接に結びつけられています。
この豊かな意味合いにより、水は文化や宗教の中で深い尊敬と畏敬の対象となっています。

西洋占星術の12星座では、双子座・天秤座・水瓶座。
タロットの大アルカナ「世界」にも描かれている四聖獣では鷲(=蠍)、スートでは「カップ」、コートカードでは「クイーン」が象徴となります。
大天使ガブリエル、精霊であればウンディーネの象徴でもあります。
万物は四大元素が複雑に組み合わせながら成り立つ
この世界の万物は、この四大元素が複雑に組み合うことで成り立っています。
人も物も一つの元素で成り立つということはありません。
火の要素が強く出る人であっても、他の要素を全く持たないという人はいません。
四大元素が複雑に絡み合って組み合わさって成り立つのです。
四大元素は、古代から西洋の哲学や神秘思想の中核を形成し、その影響は錬金術やカバラといった多様な精神的実践にも広がっています。
これらの元素は、自然界の基本的な力として、宇宙の構造や人間の本質を理解するための鍵を提供してきました。
その結果、西洋占星術やタロットカード読みなど、代表的な占術の領域においても、解釈や理論構築の重要な基礎となっています。
この伝統的な枠組みは、占い師が個人の運命や性格を読み解く際に、宇宙のエネルギーと人間の生活との関連性を理解するのに役立っています。
四大元素の概念は、時間を超えて受け継がれ、今日に至るまで西洋の精神文化において深い影響を与え続けているのです。